鬼平犯科帳(九)

「女は何よりも、男の肌身に添うているべきものだ」「な、なある……」おなじみの密偵おまさと、大滝の五郎蔵が、平蔵の粋なはからいで夫婦となった。
おまさは、少女の頃から平蔵にひそかな想いを寄せており、平蔵もそれを知らぬわけはないのだが……苦労人・鬼平の面目躍如たる「鯉肝のお里」、内部から暗殺計画が! 鬼平まさに危うしの「白い粉」ほか、「雨引の文五郎」「泥亀(すっぽん)」「本門寺暮雪」「浅草・鳥越橋」「狐雨」の全七篇収録。
相模の彦十の様子がこのごろ何となくおかしい。
むかしとった杵柄というやつかもしれぬ。
いまはお上の御用ではたらく身ながら、人のこころの奥底には、おのれでさえわからぬ魔物が棲んでいるものだ。
鬼の平蔵、自分でさえ、妻を捨てお上の御用を捨て、岡場所の女と駆け落ちをするかも知れぬ、という。
彦十をみはる平蔵、密偵たちの活躍を描く「むかしなじみ」他、「犬神の権三」「蛙の長助」「追跡」「五月雨坊主」「消えた男」「お熊と茂平」の七篇を収録。
鬼の平蔵のもとで働くのは勇猛な者ばかりではない。
勘定掛としてはまことに有能な川村弥助は、小心で地震が大の苦手。
しかし愛する妻をさらわれた時、この臆病者は変貌した――鬼平の部下への思いやりが光る「泣き味噌屋」。
木村忠吾が男色の侍にさらわれ危機一髪!の「男色一本饂飩」。
長谷川平蔵が長谷川平蔵に闇討ちされる? 奇想天外な「土蜘蛛の金五郎」。
盗んだ金を元に返した老盗人の名人芸「穴」。
他に「密告」「毒」「雨隠れの鶴吉」と七篇を収録。
若き日、平蔵と左馬之助は高杉銀平道場の竜虎といわれ、もう一人又兵衛を加えて三羽烏とも呼ばれたものだった。
それから幾星霜…盗賊となった又兵衛、火盗改方の長官・鬼の平蔵、二十数年ぶりの凄絶な対決を描く「高杉道場・三羽烏」。
彦十に五郎蔵、粂八の元・本格盗めの男たち、いまはお上の手先だが興が乗り、<昔とった杵柄>に話がまとまってしまう「密偵たちの宴」。
ほか「いろおとこ」「見張りの見張り」「二つの顔」「白蝮」「二人女房」の七篇を収録。
盗賊にも守るべきモラルがある。
盗まれて難儀をする貧しいものに手を出さぬこと、人を殺傷せぬこと、盗みに入った先で女を手ごめにせぬこと。
この三カ条を守らない盗賊を畜生盗(づと)めという。
さて、本巻の「一本眉」では掟を守りぬく真の盗賊が、畜生盗めの一味を成敗する痛快譚。
その他に、平蔵が盗賊のお頭に変身? お忍びの湯治先で一行が出会った事件「熱海みやげの宝物」と「殺しの波紋」「夜針の音松」「墨つぼの孫八」「春雪」の計六篇を収録。
続きはこちらから⇒ttp://www.ebookjapan.jp/shop/book.asp?sku=60010639